ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「……あたしってば、サクぴとの約束破ってまでなにしてるんだろ」

 エミはしばらく路地裏に座りこんでいたものの、ようやくふらふらと立ち上がる。その時、ふと背後から足音が聞こえた。
 のろのろとエミが振り向くと、裏路地の暗がりから、痩せぎすの男がこちらに猛スピードで走ってきている。

「邪魔だ、女ァ! どけぇ!」
「きゃぁっ!?」

 男とぶつかった弾みで、エミは派手に尻餅をついた。泣きっ面に蜂だ。エミにぶつかった男は、悪態をつきながら雑踏に消えていく。

「ぴえん、超痛いんですけどぉ……。って、あっ、ちょっと! そこのお兄さん、なんか手帳みたいなの落としたよ!?」

 エミは腰あたりをさすりながら、先ほどぶつかってきた男が落とした手帳を拾う。よくよく見ると、手帳の表紙にはサンクトハノーシュ王家の紋章であるモミの木があしらってあった。

「あれれ、これって見慣れた紋章だなぁ。 ……と、とにかく追いかけなきゃ! お兄さん、落とし物だよぉー! これ、かなり大切なヤツだと思うんだけどーっ!」

 エミが手を振りながら走って大通りに出た次の瞬間、エミが先ほどまでいた場所から、すさまじい爆発音がした。
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