ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 オーナーがグッとサムズアップしてみせたその刹那、屋外で何かが爆発したような音がした。しかも、一度きりではない。まるで、雷が続けざまに落ちたような衝撃が複数。
 
「なんだなんだ! ど、どうしたっていうんだ!」

 オーナーが悲鳴を上げる。異変を感じたディルは指輪をポケットに入れ、すぐさま走りだした。

(いまの音は、明らかに魔法に起因する爆発だ。爆発は把握しているかぎりで6回。首都全体が燃えてもおかしくない!)

 宝飾店を飛びだしたディルは、まずぐるりとあたりを見回す。近くでも爆発があったらしく、宝飾店の目の前の建物が赤々と燃えていた。焦げ臭い匂いが鼻をつく。パニックになった人々が、炎から逃げようと大通りにごったがえしている。
 そんな中、ひとびとの流れを思いっきり逆走して、燃えさかる炎に突っ込む若い女がディルの視界に入った。金髪のツインテールが、ぴょこぴょこと跳ねている。
 ディルはとてつもない胸騒ぎを感じた。

「も、もしかして、あの後ろ姿は……」
「――ええーいっ!」
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