ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 ドキドキ、という単語に、ディルがピクリと反応する。
 突如ディルの脳裏に、セバスチャンの言葉が浮かぶ。――プロポーズは、()()()()()()()()()シチュエーションで行うものだ、と。

(……現在、心拍数は通常より上昇している。つまり、ドキドキするようなシチュエーションと言うことなのではないだろうか。さらに、セバスチャンは条件としてふたりきりの時がいいと話していたが、ちょうど今はまわりに誰もいない。つまり、今はプロポーズに絶好のシチュエーションである!)

 さらに都合が良いことに、ディルは先ほどヴィンセント宝飾店で婚約指輪を受け取ったばかりだ。こうなれば、天才の頭は閃いてしまう。

(プロポーズするには、今しかない!)

 間違いなく、今ではない。
 この場にセバスチャンがいれば、「そのドキドキではありません!」と大真面目に止めただろう。しかし、セバスチャン(つっこみ)はあいにく不在である。

 ディルはすぐさま胸ポケットから婚約指輪を取り出して、すすけた地面に膝をついた。
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