ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
◇◆

 起き出してすぐに呼び出されたディルとエミは、朝食も食べずに王の間に向かった。
 国王が普段公務を執り行う王の間は、国王はもちろん、宰相たちとふたりの王子、そしてその一派まで勢揃いだった。

「ああ、息子たちよ……。兄弟げんかは止めてくれとあれほど言ったのに……」

 高座に座った国王は、第一王子派と第二王子派に挟まれて、今にも泣きだしそうな顔をしている。
 侍従や文官たちの出入りが激しい上に、第一王子派と第二王子派が机を隔てて激しい議論を交わしていたため、しばらくエミとディルが部屋に入ってきたことに誰も気づくものはいなかった。

「やばーい。なんかエラい人ばっかりが集まってるね……」
「肩書きばかり偉そうなだけだ。実際はたいしたことはしていない」

 緊迫した空気に思わずそわそわするエミに、ディルがこともなげに告げた。相変わらず不敬なディルに、エミは「こら、チクチク言葉はダメだよぉ」と頬を膨らます。
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