ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 サクラのお茶会の日に事件を起こしたのは、『街が燃えているのにのんきにお茶会をひらいて贅沢三昧をしている聖女』という噂を流すため。エリックはあらゆる悪知恵を働かせて、徹底的にロイとサクラを貶めようとしていたのだ。
 シナリオ通りにいけば、首都の中心たる城下町をことごとく破壊したあと、エリックは莫大な予算を投じて街を復興させ、自分の支持勢力を拡大させるはずだった。

「街の復興には、わたくしの生家であるボリタリア家の財力を大いに活用するおつもりだったようです。そうすれば、簡単に民からの人気も得るだろうと……。まったく、ボルタリア家にとっては大迷惑な話ですわ」

 あらかた話し終わったらしいアレキセーヌは、困ったように肩をすくめる。
 もちろん、エリックにとってはたまったものではない。エリックは何度もアレキセーヌに反論しようと声をあげたものの、誰もエリックの言葉に耳を傾ける者はいなかった。
 手帳という動かぬ証拠に加え、婚約者であるアレキセーヌの証言により、エリックの勝算は潰えた。
 エリックの取り巻きたちの顔色は、白を通り越して土気色に変わっている。自分たちが絶望的な状況に置かれていることに気づきはじめたのだろう。
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