ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「アレキセーヌ、お前は俺の婚約者だ! 俺が破滅すれば、婚約者のお前も、お前の生家であるボリタリア家だって、今後社交界で後ろ指を指されることになるぞ! なんだって、俺たちの婚約は教会にも認められて……」
「あら、その件については使者を昨日送っているはずですわ。もうお忘れになったの?」
「は? いや、確かに夜遅くにお前の使者がきて、大量のサインを求めたが、それがいったい……」

 エリックはうろたえる。
 実は、昨晩エリックのもとにアレキセーヌの使者が来訪し、「至急ご了承いただきたく」と、大量の資料にサインを求めてきた。城下町の火事騒ぎの首謀者として、なにかと裏工作に忙しかったエリックは、使者の言うことにほとんど耳を貸さず、適当にサインをして使者を追い返した。
 エリックはアレキセーヌのことを全面的に信頼していたため、差し出された資料の内容までは把握していない。
 アレキセーヌは、やれやれとばかりに肩をすくめた。

「やっぱりエリック様は昨日の資料の内容を読んでいなかったんですのね。昨日の資料の内容は、私たちの婚約破棄についての合意書ですわ。まあ、カモフラージュに小難しい内容の申請書を一気に二十枚くらい一緒にお渡しした気もしますが……」
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