ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 そもそも、エミはサクラのことを、「か弱くて守ってあげたくなるような」聖女だと話していたはず。あまりに話と違うではないか。か弱い女であれば、こんな訳アリな文面の手紙は普通よこさない。
 ディルは眉間に皺を寄せ、しばらくグリグリとこめかみのあたりを揉みながら、二通目に手を伸ばす。こちらは見慣れたもので、王家の紋章であるモミの木あしらった蝋封がほどこされている。
 蝋封は強力な魔法が施されており、ディルの魔力でしか開封できないようになっていた。ディル以外の人間が手紙を読もうとすると、蝋封が発火し、手紙ごと燃える仕組みだ。
 極秘の内容なのだろうと覚悟して、ディルは蝋封に指を滑らせ、魔力を指先に集めると、便箋を開封する。そして、手紙の内容を読んで、ますます混乱した。こちらも、予想していないパターンだ。

『聖女エミは、危険につき常に監視すべし。もし危険と判断した場合、すみやかに殺せ』

 ディルは自分の目を疑い、何度か手紙を読み返す。しかし、何度読んでも内容は同じ。少し右上がりの焦ったような走り書きの文字は、確かに国王の筆跡だ。

「聖女エミが危険……? 危険と判断すれば、殺せ……?」
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