ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 サンクトハノーシュ王国の国王は愚鈍だが、臆病者ゆえに、「危険なもの」や「脅威をもたらすもの」に対しては、昔から妙に勘が冴えわたる。ディルもその危険予知能力だけは一目置いているため、迂闊に彼の警告を無視することはできない。

「……とりあえず、しばらく様子見するしかないか」

 ふう、とディルは息を吐く。
 何らかの理由で聖女エミを「危険」と判断することがあれば、ディルは国王の命に従って彼女を殺さなければならない。ディルも貴族の端くれとはいえ、それなりに剣を使えるように訓練されている。魔法も得意だ。いざとなればか弱い女の首を刎ねるくらい造作ない。

(……しかし、聖女エミをこの手で殺すことは絶対に避けたい。まあ、聖女エミを殺すような事態になれば、確実に首都にいる聖女サクラに命を狙われるだろうしな……)

 聖女サクラのことはよく分からないが、執念深い人物だということだけははっきりしている。
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