ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 ディルの手が、エミの敏感な場所を少しずつ辿っていく。
 ついに布越しでは満足できなくなったエミが、ディルの手をぎゅっと掴む。

「あの……、ハクシャク、直接触ってほしい」
「……ッ!」

 何かをこらえるような押し黙ったディルは、急に愛撫をやめ、拗ねたような顔をする。

「おい、先ほどから何度も私のことをハクシャクなどと連呼しているが、いつまで私のことをハクシャクなどと他人行儀に呼ぶつもりだ」
「えっ」
「私たちは夫婦になるのだ。いつまでも『ハクシャク』で呼ぶなんて、おかしいだろう」

 エミはポカンとしたあと、大きな目をパチパチとしばたかせた。

「ホントに名前で呼んでいいの? ……名前呼びとか、ハクシャクは好きじゃないかなって思ってたんだけど」
「お前に呼ばれるなら、どんな呼び名でも構わない。しかし、お前は私の妻になる。できれば名前で呼んでほしい」
「じゃあ、でぃ、ディル……って、呼んでいい?」
「……っ!」
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