ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―

番外編 聖女、習う!

 城下町の爆発騒ぎより少し前に、話は遡る。

「では、先ほど教えた通りにやってみてくだされ」

 王宮の広い庭園の片隅で、聖女エミと年老いた魔導士が向かいあっていた。

「よっしゃ、じゃ、いっちょかますよお~♡」

 エミが片手をあげると、巨大な煙のようなものが膨れ上がった。その煙は雲となって太陽の光を遮り、やがて雷雨となり、エミのいる辺り一帯だけ暴風雨となっていく。
 エミのすさまじい魔法を見た魔導士が「ふおお」と驚嘆の声を上げる。

「なんと……! 古の魔法の再来じゃ……」
「ぎゃーっ、マジでちょ~雨降ってる! ヤバいって! メイクが崩れるって! ツケマが取れちゃう!」

 エミは大慌てで片手を振る。すると、雲はあっという間に霧散して消え失せた。
 魔導士はすっかりずぶ濡れになったコートを重そうに引きずりながら、エミの近くに走り寄る。

「……すばらしい、すばらしいですぞ! 聖女様の力がこれほどまでとは!」
「えへへ~、せんせーってば、何やっても褒めてくれるんだもん。照れるってばぁ」
「何をおっしゃるのです! これほどの魔力を完璧に制御するなど、並大抵の魔法使いでは不可能! エミ様は間違いなく稀代の天才です。儂からはもうなにも教えることはありませぬ」

 深紫色のローブを纏った魔導士が、惜しみない賛辞をエミに送る。腰の曲がった魔道士の名前はオルコ・フィラルコ。通称老オルコと呼ばれる彼は、フィラルコ家の前筆頭である。
< 380 / 392 >

この作品をシェア

pagetop