ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 老オルコは、高齢を理由に引退生活をしているものの、いまだにサンクトハノーシュ王国一の魔導士として名高い。王族からの信頼も厚く、数々の勲章を授けられている。
 そんな優れた魔導士とエミがなぜ対峙しているのかといえば、魔法を習いたいとエミが言ったため、「せっかくならこの国で一番の魔道士を講師にしましょ」と、サクラがあらゆる人脈を使って、老オルコを講師につけたのだ。エミが老オルコから手ほどきをうけるのは、今日で三回目である。
 しかし、老オルコはこれ以上エミにはなにも教えられないと悟っていた。

「いやはや、大したものです。聖女様に魔法を教えるなどという大役をサクラ様から仰せつかり、儂にできることがあればと喜んでお引き受けしましたが、エミ様がこれほどまでにすばらしい才能をお持ちだとは……」

 老オルコは興奮したようにまくしたてる。エミは「それほどでもないよぉ」と頭をかいているが、もちろんとんでもないことをやってのけている。
 そもそもエミに与えられた魔力の量は段違いであり、ポテンシャルが高すぎるのだ。「ちょい見てて~」と、エミが鼻歌交じりに無詠唱で高度魔法を展開したとき、オルコは興奮のあまり失神しかけた。
 老オルコはたっぷりとたくわえたあごひげをしきりに撫で、思案げな顔をする。

「うーむ、我が家門だけの知識では、聖女様には物足りぬことでしょう。次回はベビヒアン家のショーレンを呼びましょうか。あの家門であれば古の魔法の知識もあることでしょう」
「めっちゃ楽しそう! でも、それでいいの? 魔導士の人たちって、あんまり外部の人たちに魔法を教えたがらないって、魔法の授業のとき聞いた気がするんだけど」
< 381 / 392 >

この作品をシェア

pagetop