ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「す、すみません……。情けないところをお見せしました……。しかし、エミ様がこちらに来てから、ディル様もこの屋敷も、大きく変わりました。貴女様のいないこの屋敷など、もう想像すらできないほどです。ですから、なにがなんでもエミ様はずっとこのお屋敷にいてくださいまし! ディル様がどんなに冷たくても、このセバスチャンはいつもエミ様の味方ですから――……」
「だれが冷たい、だと?」

 急に、絶対零度の冷たい声が二人の頭上から降ってきた。セバスチャンが小さく悲鳴をあげ、ぎこちなく振り返る。

「あ、あ、あ……、ディル様……、これは、その……」
「あっ、ハクシャクだ~♡ ち~~~っす! 今日もイケメてるね♡」

 嬉しそうにニコニコ笑うエミの手から、ディルはさっと重い本を取り上げる。

「セバスチャンに頼んだ本が届かないから様子を見に来てみれば、無駄話をしていたのか。まったく、聖女エミよ、お前はこの屋敷の女主人となるのだ。このような雑用など、全てセバスチャンに任せれば良い。大人しく部屋で静かにしておけ」
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