ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「も~~~~! セバスちはおじーちゃんなんだから、こんな重い本持たせたらギックリ腰になっちゃうでしょ? そしたら困るのはハクシャクだよ?」
「うっ……。正論をぶつけてきやがって……」
「や~ん、しかめっ面きゃわたん♡」
 
 ディルは眉間に深い皺を寄せ、苦い顔をする。その顔だけでセバスチャンは震え上がったももの、エミは相変わらずケラケラ笑っている。
 エミの一点の曇りもない明るい笑顔は、この屋敷に来てから全く変わらなかった。ディルにどんなに素っ気ない態度をとられようと、エミは特に気にする様子もない。
 
「あっ、ねえねえハクシャク! 今日のおやつも、一緒に食べてくれる? キーくんがとっておきのできたって言ってたから、マジ美味しーと思うんだ」
「……悪くない。時間を作ろう。いつもの時間に書斎で待つ」
「りょ! んじゃあ、さっそくおやつは二人分って伝えとくねえ!」

 エミはブンブン手を振って厨房に向かって走り去っていく。
 ディルはしばらくエミの背中を目で追った後、何かをごまかすように小さく咳払いをした。
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