ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「……おい、セバスチャン」
「はっ、はい!! 未来の女主人となるエミ様に重い本を持たせるなんて雑用をさせてしまい、本当にすみませんでしたッ!」
「……別にその件はどうでもいい。どうせ聖女がやりたいと言い出したんだろう。それよりもその、……聖女のいう、キーくんとは誰だ?」

 ディルの質問に、セバスチャンは不思議そうな顔をする。

「キーくんですか? ウチの料理人の、キースのことかと……」
「そうか。……愛称で呼び合うなんて、その、……その料理人と聖女はずいぶん親しいようだが……」
「聖女様はこの屋敷の者には皆、平等あだ名をつけておりますよ。メイド長のメアリーは『メアちん』ですし、庭師のスルツは『スッさん』、私にいたっては『セバスち』ですが……」
「ほう。……聖女は、私のことを未だ『伯爵』と呼ぶ。名前で呼ばれたことは一度も……」
「察するに、ディル様はあだ名で呼んでもらえないのを気にしておられるのです? それなら、聖女様に直接あだ名で呼んでほしいと頼めば良いのです。すぐにでも珍奇なあだ名をつけていただけるかと……」
「気にしてなどおらぬ」
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