ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 その結果、「男女の付き合いにおいても、常に合理性を重視する」という、なんとも残念な男が出来上がってしまったという次第である。

 セバスチャンは頭を抱えた。

(ああ、人間関係についての知識をディル様にお教えした方は過去にいなかったのか……)

 いなかったのである。

 動かしがたい真実に一瞬気が遠くなった気もしないでもないが、ここで諦めてしまってはダメだとセバスチャンはなんとか踏みとどまる。

「ディル様、婚約期間と言えば、お互いの気持ちを探り合い、甘い言葉を囁き、贈り物を送る。そんな、一番楽しい時期ですぞ。そのような時期をみすみす逃すなんて、人生においては大いなる損失です」
「はあ、全くもってどこが楽しいのか分からん。そんな効率の悪いことをしていては、時間の無駄だ。馬鹿らしい」
「恋愛なんて馬鹿にならないとできませんよ! 第一、おふたりは、せ、せ、接吻もまだでしょう!」
「おい、なぜ赤の他人であるはずのお前が、顔を赤らめている? 全く理解ができない……。そもそも、婚儀も近々行う予定なのだ。我々には時間がない」
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