ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―

聖女、参る!(1) ※

「良いですか、エミ様。アイツに嫌なことをされた場合は、すぐに大きな声で叫んでください。私たちがすぐに駆け付けますから」
「も~、メアちんってば! ハクシャクのことアイツって言わないの!」
「言いたくもなりますとも! エミ様がこちらに来てたった2週間……。さっそく寝室に来いと命じるなんて、あのケダモノ! セバスチャンもセバスチャンで、何をやっているのです! まったくあの臆病者ときたら!」

 メアリーが珍しく烈火のごとく怒っているのを、エミは困った顔で見つめていた。メアリーは先ほどから主への悪口を言い連ねつつ、足音荒く歩いている。さきほどからずっとこの調子だ。どうやら、エミの前ではいつも笑顔を絶やさないメアリーだが、一度怒り出すとなかなか怒りが収まらないタイプらしい。
 ついにたどり着いた寝室の重厚なマホガニーの扉を前に、メアリーはもう一度声を潜めて念を押すように言った。

「無理やり何かをさせられそうになったら、噛みついておやりなさい。そのキラキラの爪で目を一突きするのもありですからね!」
「いやメアちんマジ物騒すぎ~~! あたしの爪は大事故になるってえ……。でもさぁ、今日の爪キラキラでかわいいっしょ? オーロラカラーなんだけど、超お気に入りなんだぁ。ハクシャクも気に入ってくれるといいなぁ」
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