ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―

聖女、来る!

 ――ところ変わって、サンクトハノーシュ王国北限の地ガシュバイフェン。

 ソーオン辺境伯爵こと、ディル・K・ソーオンは、先ほどから1ページたりとも進まないぶ厚い本を前に、重いため息をついた。
 ため息に反応した執事のセバスチャンが慌てた顔をする。

「あ、主様(あるじさま)! な、なにか、お心を煩わすことでもございましたでしょうか? このセバスチャン、命じていただければなんなりと……」
「別に」

 ディルは短く答える。彼はあまり口数が多い方ではないが、今日はいつにもまして寡黙だ。
 気をつかったセバスチャンは、とりあえず温かい紅茶を気難しい彼の主人に差し出した。甘党の彼のために、いつも通り砂糖を多めに入れた紅茶だ。
 ディルは差し出された紅茶をとりあえず黙って口にし、そして押し黙る。

 あまりに気まずい沈黙が、二人の間に流れた。

 ついに重苦しい雰囲気に耐えられなくなったセバスチャンが、口を開く。
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