ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「お、おい、何故泣くんだ?」
「…ご…ん…、さい……」
「なっ、泣くほど痛かったのか!?」
「ち、違うの……」
エミは必死で頭を振る。大粒の涙を手の甲で拭いながら、エミはくぐもった声で何度も謝った。
「……ごめんなさい……。初めてで、やり方分からなくてちゃんとできなかったよね。でも、もっと頑張るからぁ……。ハクシャク、……あたしを、キラいになったりしないでぇ」
「…………」
「あたし、この世界に家族とか、……い、いなくて。……ハクシャクに捨てられたら、……どうしていいかわかんないの……っ」
それは、消え入りそうなほど、小さな、小さな声だった。細い肩がかすかに震えている。
ディルは驚いた。目の前で儚げに泣く女は、本当にあの聖女エミなのだろうか。
今まで、エミはディルの前で弱音一つ吐いたことはない。エミはいつも明るい笑顔を絶やさず、いつも楽しげに動きまわっていたはずだ。それに、彼女を嫌う人間なんてこの屋敷には誰もいない。――それはもちろん、ディルを含めて。
しかし、そんな彼女の口から、あまりにも切実で弱気な一言が紡がれた。それは、ひどく無防備な今だからこそ、発せられた言葉なのだろう。
ディルはいきなり頓悟した。
「…ご…ん…、さい……」
「なっ、泣くほど痛かったのか!?」
「ち、違うの……」
エミは必死で頭を振る。大粒の涙を手の甲で拭いながら、エミはくぐもった声で何度も謝った。
「……ごめんなさい……。初めてで、やり方分からなくてちゃんとできなかったよね。でも、もっと頑張るからぁ……。ハクシャク、……あたしを、キラいになったりしないでぇ」
「…………」
「あたし、この世界に家族とか、……い、いなくて。……ハクシャクに捨てられたら、……どうしていいかわかんないの……っ」
それは、消え入りそうなほど、小さな、小さな声だった。細い肩がかすかに震えている。
ディルは驚いた。目の前で儚げに泣く女は、本当にあの聖女エミなのだろうか。
今まで、エミはディルの前で弱音一つ吐いたことはない。エミはいつも明るい笑顔を絶やさず、いつも楽しげに動きまわっていたはずだ。それに、彼女を嫌う人間なんてこの屋敷には誰もいない。――それはもちろん、ディルを含めて。
しかし、そんな彼女の口から、あまりにも切実で弱気な一言が紡がれた。それは、ひどく無防備な今だからこそ、発せられた言葉なのだろう。
ディルはいきなり頓悟した。