ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「本当だ。それに、だいぶ身体に無理をさせてしまったと反省している。今宵は、とりあえず寝るが良い」
「うん……」

 エミは涙をぬぐいながら、ブランケットを被る。
 ディルは丁寧にエミのつま先までブランケットでくるむと、エミの頭をもう一度優しく撫でた。エミは気持ちよさそうにその手に頭をぐりぐりすり寄せる。

「ハクシャク、ありがと。ほんとに優しいよね」
「そうか? これくらい、普通だろう」
「ふふ、……ここで謙遜するの、マジで惚れりてぃ高い~♡」
「フッ。お前は、そうやって意味の分からないことを言って笑っているほうが、泣いているよりずっと良い」

 エミが明るく微笑んだのにホッとした顔をしたディルは、ベッドから立ち上がって床に落ちていた服を拾うと、いそいそと服を着始める。

「あれ? ハクシャク、一緒に寝てくれないの?」
「私はその、……人と一緒に寝るのは苦手なので、別室で寝る。お前はここでゆっくり休むと良い。身体もつらいだろうから、なにかあったら遠慮なくメイドを呼べ。それでは」
「ねえ、ハクシャクだいぶ顔赤くない?」
「気のせいだ」

 妙にギクシャクした動きで、ディルはそそくさと部屋を発つ。ピロートークは諸事情により省略するらしい。
 部屋に残されたエミは一人首を傾げたものの、やがて小さくあくびを漏らした。

「ンフフ、このブランケット、ハクシャクの匂いがする……。やばたん……」

 満足げに呟いて、エミはすぐに寝息を立て始めた。
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