ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 メイドの一言に、たまたま近くでシーツにアイロンをかけていたメイドたちが一斉に頷く。皆、元気のないエミのことを心配して聞き耳を立てていたのだ。
 エミは少し悩んだような顔をしたあと、観念したようにため息をついた。

「あのねえ、最近ハクシャクがよそよそしいっていうか、冷たい気がしててぇ……。ガチしょんぼり沈殿丸なんだよぉ~。マジぴえん……。あたし何かしたかなあ?」

 深いため息をついたエミを前に、メイドたちは揃って顔を見合わせると、困った顔をした。ややあって、おずおずと赤髪の若いメイドが口を開く。

「お言葉ですが聖女様、それは気のせいでは? 私たちには、伯爵様はずっと同じに見えますよ」
「でもさあ、ハクシャクってば、この1週間くらいあたしが話をしてるときとか、マジ上の空で! 話しかけても急用を思い出したとか言ってどっか行っちゃうし、目も合わせてくれないし、ぜんぜん楽しくなさそうっていうかぁ……」
「伯爵様が楽しそうな顔をしているなんて、全く想像つかないのですが……」
「そーなの? ハクシャク、けっこう表情豊かで分かりやすいと思うよ?」
< 79 / 392 >

この作品をシェア

pagetop