ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「お、お前、なんか最近ますます可愛くなっている気がするのだが、私に魅了の魔法でもかけたのか? 異世界から来た聖女たちは、並外れた魔力を持つと聞くが……」
「えっ、魅了? なにそれ、そんな魔法あるの? むしろ教えてほしいくらいなんだけど~」
「絶対教えるものか。これ以上は耐えられる気がしないからな!」

 傍から聞けば真正の馬鹿ップルの会話であるものの、本人たちにはまるでその自覚はない。
 気を取り直すように、ディルは軽く咳払いをする。彼は今日、とっておきの秘策があるのだ。ディルはあらかじめ頭のなかで用意しておいた台詞をそのまま口に出した。

「……ええっとだな、本日はお日柄もよく……じゃなかった、オッホン。……私が呼び出した理由は、一つ。お前が飲みたいと言っていたタピオカとやらを見つけたと、旅商人から連絡が入ったのだ」
「うそぉ!? タピオカってこの世界にあるの!? しかも、探してくれてたんだ!」

 つけまつ毛で囲まれた大きな眼が一瞬で輝いた。ディルは重々しく頷く。

「ああ。それで、……今から街へ出ないか? その商人が、ガシュバイフェンにいるらしい」
「えっ」
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