成長した年下王子は逃げたい年上妻を陥落させる
 しかし、それより辟易したのはリシャールの距離感だった。エスコートは自然で、どこまでも紳士的だ。問題なのは、リシャールは、城下町の視察の間、さも当たり前のように、コルネリアの腰に手を回していたことだ。
 その上、リシャールはことあるごとに熱のこもった視線でじっとコルネリアを見つめるため、さすがのコルネリアもドギマギしてしまう。

――まるで、わたくしの知っているリシャールではない、知らない男の人と一緒に歩いているようだわ。

 リシャールの変わりように、コルネリアは今更ながら3年の時の長さを感じてしまう。

――嫌だわ。この子、どれだけピエムスタで女の子と遊んできたのかしら……。

 なんだか、モヤモヤした気持ちになるコルネリアである。
 そんなコルネリアの複雑な気持ちを知るよしもないエツスタンの人々は、りりしく成長した領主リシャールが、その妻コルネリアを連れだって歩く姿を、ほほえましく見守っていた。

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