成長した年下王子は逃げたい年上妻を陥落させる
小さな婚約者
二人の結婚が決まったのは、リシャールが12歳、コルネリアが17歳のことだった。
「我が娘、コルネリアよ。エツスタン新領主のリシャール・ラガウェンのもとへお前を嫁がせようと思う」
ある日前触れもなく父王であるセアム三世にリシャールとの結婚を下命されたコルネリアは、その美しい薄緑色の目を見開いた。
結婚を命じられること自体は、別に驚くべきことではない。コルネリアは17歳。そろそろ婚姻の話が出てもおかしくない年頃だ。それに、王族の一員としてこの世に生を享けた以上、政略結婚を命じられる覚悟もできていた。
しかし、結婚相手がエツスタンの元王族のリシャール・ラガウェンとなれば話は別だ。
「エツスタンの、元王子との結婚ですか」
「ああ。……お前には、非常に難しい立場に身を置いてもらうことになるだろう」
エツスタンといえば、先の戦争でピエムスタ共和国が支配して間もない領地である。
もともとエツスタンは、独立した「エツスタン王国」という名の国家だった。エツスタンの人々はエルフの末裔とも言われており、独自の魔法文化と工芸品で知られていた。
エツスタン人たちは、細々と、しかし誇り高くその文化を守ってきたのである。
しかし、数年前に北方の海のはるか向こうにあるハンソニア王国とエツスタン王国の間で戦争が起こった。ハンソニアは、不凍港を持つエツスタンを足掛かりにしてソロアピアン大陸すべての覇権を握ろうと企んでいたのだ。
これを看過できないソロアピアン大陸最大の領土を持つピエムスタ共和国がエツスタン王国に加勢し、先の戦争は辛くもピエムスタ=エツスタン連合軍が勝利した。
「我が娘、コルネリアよ。エツスタン新領主のリシャール・ラガウェンのもとへお前を嫁がせようと思う」
ある日前触れもなく父王であるセアム三世にリシャールとの結婚を下命されたコルネリアは、その美しい薄緑色の目を見開いた。
結婚を命じられること自体は、別に驚くべきことではない。コルネリアは17歳。そろそろ婚姻の話が出てもおかしくない年頃だ。それに、王族の一員としてこの世に生を享けた以上、政略結婚を命じられる覚悟もできていた。
しかし、結婚相手がエツスタンの元王族のリシャール・ラガウェンとなれば話は別だ。
「エツスタンの、元王子との結婚ですか」
「ああ。……お前には、非常に難しい立場に身を置いてもらうことになるだろう」
エツスタンといえば、先の戦争でピエムスタ共和国が支配して間もない領地である。
もともとエツスタンは、独立した「エツスタン王国」という名の国家だった。エツスタンの人々はエルフの末裔とも言われており、独自の魔法文化と工芸品で知られていた。
エツスタン人たちは、細々と、しかし誇り高くその文化を守ってきたのである。
しかし、数年前に北方の海のはるか向こうにあるハンソニア王国とエツスタン王国の間で戦争が起こった。ハンソニアは、不凍港を持つエツスタンを足掛かりにしてソロアピアン大陸すべての覇権を握ろうと企んでいたのだ。
これを看過できないソロアピアン大陸最大の領土を持つピエムスタ共和国がエツスタン王国に加勢し、先の戦争は辛くもピエムスタ=エツスタン連合軍が勝利した。