成長した年下王子は逃げたい年上妻を陥落させる

甘い夜 *

 リシャールはもう片方の手でコルネリアの頬を無理やり掴むと、もう一度口づけをした。少し開けた唇の隙間から、にゅるりと舌が侵入して、あっという間に口腔内を蹂躙する。上顎を舐められ、歯列をなぞられ、口の端から零れた唾液は拭うことも許されない。

――く、苦しいっ……
 
 うまく呼吸ができず、脳内に酸素が行きわたらない苦しさと、一方的に与えられる快感とで、コルネリアの抵抗する力がだんだん失われていく。
 ようやく激しい接吻から解放されたとき、頬を掴んでいたリシャールの手は、いつの間にかコルネリアのネグリジェに手を付けていた。

「だ、だめ……、こんなはしたないこと、だめよ……」

 なけなしの力で抵抗するものの、成長したリシャールの太い腕はビクともしない。あっという間に一糸まとわぬ姿にされたコルネリアは、形の良い胸を両手で隠そうとした。しかし、リシャールの手がそれをいとも簡単に阻む。

「隠さないで。もっと見せてください」

 暗い部屋の中で囁かれた低くかすれた声は、コルネリアが記憶するリシャールの変声期前の可愛らしいものではない。それは他でもない、欲情した大人の男の声だった。
 震えるコルネリアの手を握りしめつつ、リシャールは舐めるように肢体を見つめてくる。視線はまず、ふくよかな胸を捉え、そしてくびれた腰と、薄い茂り、そして白くほっそりとした足へとうつっていく。
 リシャールに見つめられる場所がカッと熱くなるようで、コルネリアは指の先まで真っ赤になった。
 
「リシャール、様……」
「……美しい。なんて美しいんだ」

 うわごとのように呟きながら、リシャールはわずかな窓灯りを頼りに、コルネリアを食い入るように見つめた。視線で犯されている状況に耐えられず、コルネリアはぎゅっと目をつぶる。
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