成長した年下王子は逃げたい年上妻を陥落させる
『わたくしは、貴方にふさわしくないわ』
『賢しらだった女なんて、うるさいだけでしょう』

 コルネリアは簡単に自分を卑下する。人に対して限りなく寛容な彼女は、一方で自分に対する評価があまりにも厳しい。

 しかし、リシャールは思う。
 着飾ることに一切興味のない彼女はいつも楚々としているものの、それでもなお溢れ出す気品や優雅さはだれにも劣らない。それに、エツスタンを一人で復興させる政治手腕も、リシャールは心底尊敬している。
 実を言うと、微妙な立場にいる愛娘を心配したセアム三世に「コルネリアがピエムスタに帰りたいと言えば、すぐにでも帰してやってくれないか」と頼まれたのも事実だ。
 現に、セアム三世は愛娘のコルネリアと破婚を勧めるように、秘密裏に何度かリシャールの寝室にエツスタン出身の美しい女たちを送ったりもしている。もちろん、リシャールはそれをすげなく拒んだが。

――まったく、親子そろって閨に女を送りたがるのだから、困ったものだな。

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