成長した年下王子は逃げたい年上妻を陥落させる
「――でも、ピエムスタに行く前のリシャールは、なんだかわたくしを避けているようだったわ。雷が鳴っても一緒に寝てほしいって言わなくなったし、ピエムスタの遊学への件も、わたくしに黙って勝手に決めてしまうし」
「お坊ちゃまは小さなころから利発で、大人びていらっしゃいましたから。自分のことは、自分で決めたかったんだと思います。そんなお坊ちゃまも18歳になられたなんて! きっと立派に成長されたことでしょうね」

 コルネリアは不思議な気分になった。遊学に行く前のリシャールは、大人びてはいるものの、まだあどけなさの残る少年だった。身長もコルネリアより低かったはずだ。

「正直な話をすると、リシャールが成長した姿なんて全然想像がつかないの」
「きっと、コルネリア様より背も高くなられたことでしょうね。お坊ちゃまとおいそれと呼べなくなりますねえ」
「そうよ。……リシャールは領主になるんだから」

 コルネリアは遠くを見つめて成長したリシャールの姿に思いをはせた。視線の先には、夜になってもなお明るい城下町がある。コルネリアはこの風景が好きだった。しかし、この風景を見ることができるのも、残りわずかだ。

 全てが落ち着けば、コルネリアはリシャールに離縁を申し込もうと考えていた。

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