スイート×トキシック
*
この部屋の電気が消えたのは初めてのことだった。
すっかり慣れたはずの監禁部屋が、それだけで新鮮に思える。
それぞれお風呂から上がると、ふたりでわたしの布団に入っていた。
さすがにもう、手錠は外した。
(どうしても不安だって言うから一緒に寝ることになったけど……)
鼓動の音、衣擦れの音、息遣い……。
一段と彼を近くに感じる。
暗いのに目が慣れてきて、輪郭以上を捉えられるようになってきた。
向かい合って横になったまま、十和くんは目を閉じている。
「…………」
その整った顔をじっと見つめた。
(睫毛長いなぁ。鼻筋も綺麗。唇も……)
阻むものは何もなくて、簡単に触れられる。
無防備って罪だと思う。
「!」
彼が不意に、ゆっくりと目を開ける。
「……何見てるの?」
いつもより落ち着いた声色から、すっかり心安らいでいるのが伝わってきた。
困惑したようにわたしを傷つけ、狼狽えていた様子が戻ってくる気配はない。
わたしの言葉が届いたんだ。
……わたしの隣、安心出来るのかな。
「寝てるかと思った」
「はは、さすがに早すぎ。まだ横になったばっかだよ」
彼の声が、存在が、何だか無性に心地いい。
募っていく想いに胸が焦がれていく。
(ずっと、この時間が続けばいいのに)
いつか彼が唱えていた儚い願望は、わたしの唯一の願いになった。
(十和くんを好きになるはずなんてないと思ってたんだけどな……)
「……芽依、可愛い」
まっすぐ見つめていると、十和くんがいつものように甘く微笑んだ。
そのままこちらに手が伸びてくる。
頭を撫でられるか、頬に触れられるか、そんなことを想像しながらただ委ねていた。
────けれど。
「…………」
「……?」
十和くんの手はわたしに届く前にぴたりと止まった。
思わず不思議がると、彼の双眸が戸惑うように揺れているのに気が付いた。
「十和くん?」
この部屋の電気が消えたのは初めてのことだった。
すっかり慣れたはずの監禁部屋が、それだけで新鮮に思える。
それぞれお風呂から上がると、ふたりでわたしの布団に入っていた。
さすがにもう、手錠は外した。
(どうしても不安だって言うから一緒に寝ることになったけど……)
鼓動の音、衣擦れの音、息遣い……。
一段と彼を近くに感じる。
暗いのに目が慣れてきて、輪郭以上を捉えられるようになってきた。
向かい合って横になったまま、十和くんは目を閉じている。
「…………」
その整った顔をじっと見つめた。
(睫毛長いなぁ。鼻筋も綺麗。唇も……)
阻むものは何もなくて、簡単に触れられる。
無防備って罪だと思う。
「!」
彼が不意に、ゆっくりと目を開ける。
「……何見てるの?」
いつもより落ち着いた声色から、すっかり心安らいでいるのが伝わってきた。
困惑したようにわたしを傷つけ、狼狽えていた様子が戻ってくる気配はない。
わたしの言葉が届いたんだ。
……わたしの隣、安心出来るのかな。
「寝てるかと思った」
「はは、さすがに早すぎ。まだ横になったばっかだよ」
彼の声が、存在が、何だか無性に心地いい。
募っていく想いに胸が焦がれていく。
(ずっと、この時間が続けばいいのに)
いつか彼が唱えていた儚い願望は、わたしの唯一の願いになった。
(十和くんを好きになるはずなんてないと思ってたんだけどな……)
「……芽依、可愛い」
まっすぐ見つめていると、十和くんがいつものように甘く微笑んだ。
そのままこちらに手が伸びてくる。
頭を撫でられるか、頬に触れられるか、そんなことを想像しながらただ委ねていた。
────けれど。
「…………」
「……?」
十和くんの手はわたしに届く前にぴたりと止まった。
思わず不思議がると、彼の双眸が戸惑うように揺れているのに気が付いた。
「十和くん?」