スイート×トキシック
*
いつものようにスーパーに寄ってから十和の家を訪ねた。
インターホンを鳴らす。
がちゃ、とドアを開けた彼は驚いたような顔をした。
「あれ……」
「連絡もなしに悪いな」
いつも通り上がろうとしたものの、なぜか阻まれる。
十和は腕を伸ばして戸枠に手を置き、進路を塞いできた。
「ごめん、今日はちょっと」
困ったように苦笑するも、その理由を話そうとはしない。
「……そうか。そういうこともあるよな」
「ごめんね、せっかく来てくれたのに」
「いや、突然来た俺が悪かった。これだけでも渡しておく」
「ありがと」
買い物袋を受け取った十和はいつものように笑った。
俺はそれをじっと見据えつつ切り出す。
「……お前、俺の車使ったか?」
弾かれたように顔を上げる。
はっとしたその表情は心当たりがあることを物語っていた。
「……バレたかぁ。ちゃんと元通りにしたつもりだったのにな」
肩をすくめつつも悪びれない十和に眉をひそめる。
「おい、分かってるのか? 無免許なんだし事故でも起こしたら────」
「分かってるって。ごめんごめん」
俺はため息をつき、手を差し出した。
「スペアキー返せ」
「あー……ごめん、なくした」
「はぁ?」
「ごめん! ほんとにごめんなさい」
そんな馬鹿な、と思ったが、十和は神妙な様子で平謝りしている。
そういう顔をされると俺は弱い。
分かっていても怒れなくなる。
「一生懸命探すから。あ、手紙のこともちゃんと調べてるよ」
“手紙”という単語に、そういえば、と思い出してぞくりとした。
「その件なんだが……」
手紙のみならず、写真が入れられていたことを伝える。
「盗撮? ……それってもうストーカーじゃない?」
眉を寄せ、怪訝そうに十和が言った。
ストーカー。
何だか一気に不穏さが増す響きだ。
「いっそのこと警察に────」
「ちょっと待って。それは得策じゃないと思うなぁ」
「何でだ?」
「だってそんなことしたら逃げられちゃうよ」
何を懸念しているのか俺にはいまいち分からなかった。
逃げられちゃう、ということは手紙や写真を送りつけられることがなくなるのだろうが、それならその方がいいに決まっている。
そのために警察を頼るのではないか。
「ストーカーさんだってそんなんで引き下がるほど単純じゃないだろうし、そしたら今度は直接アプローチしてくるかもよ?」
いつものようにスーパーに寄ってから十和の家を訪ねた。
インターホンを鳴らす。
がちゃ、とドアを開けた彼は驚いたような顔をした。
「あれ……」
「連絡もなしに悪いな」
いつも通り上がろうとしたものの、なぜか阻まれる。
十和は腕を伸ばして戸枠に手を置き、進路を塞いできた。
「ごめん、今日はちょっと」
困ったように苦笑するも、その理由を話そうとはしない。
「……そうか。そういうこともあるよな」
「ごめんね、せっかく来てくれたのに」
「いや、突然来た俺が悪かった。これだけでも渡しておく」
「ありがと」
買い物袋を受け取った十和はいつものように笑った。
俺はそれをじっと見据えつつ切り出す。
「……お前、俺の車使ったか?」
弾かれたように顔を上げる。
はっとしたその表情は心当たりがあることを物語っていた。
「……バレたかぁ。ちゃんと元通りにしたつもりだったのにな」
肩をすくめつつも悪びれない十和に眉をひそめる。
「おい、分かってるのか? 無免許なんだし事故でも起こしたら────」
「分かってるって。ごめんごめん」
俺はため息をつき、手を差し出した。
「スペアキー返せ」
「あー……ごめん、なくした」
「はぁ?」
「ごめん! ほんとにごめんなさい」
そんな馬鹿な、と思ったが、十和は神妙な様子で平謝りしている。
そういう顔をされると俺は弱い。
分かっていても怒れなくなる。
「一生懸命探すから。あ、手紙のこともちゃんと調べてるよ」
“手紙”という単語に、そういえば、と思い出してぞくりとした。
「その件なんだが……」
手紙のみならず、写真が入れられていたことを伝える。
「盗撮? ……それってもうストーカーじゃない?」
眉を寄せ、怪訝そうに十和が言った。
ストーカー。
何だか一気に不穏さが増す響きだ。
「いっそのこと警察に────」
「ちょっと待って。それは得策じゃないと思うなぁ」
「何でだ?」
「だってそんなことしたら逃げられちゃうよ」
何を懸念しているのか俺にはいまいち分からなかった。
逃げられちゃう、ということは手紙や写真を送りつけられることがなくなるのだろうが、それならその方がいいに決まっている。
そのために警察を頼るのではないか。
「ストーカーさんだってそんなんで引き下がるほど単純じゃないだろうし、そしたら今度は直接アプローチしてくるかもよ?」