スイート×トキシック
ベッドに戻ったものの、眠れないで横になっているうちに日が昇っていた。
朝の支度と朝食を終えると、裁ちばさみとハンガーを手に監禁部屋へ向かう。
ものはそのまま残っているが、今はもぬけの殻だ。
「よいしょ」
血の染みたラグの上に腰を下ろす。
そこに放置していた、芽依の制服を手に取った。
「あー、汚しちゃってごめんね」
ブラウスもスカートもリボンも、彼女の血で染まっている。
変色して茶色っぽくなっていた。
はさみを開く。
じょき、じょき、とずたずたに切り刻んでいく。
原型を留めないくらいに制服を切り裂くとゴミ袋に突っ込んだ。
そこには既に血まみれのブルーシートが入っている。
「でも、これは無事でよかった」
布団の上に置いてあったカーディガンを手に取る。
最後の日、彼女はこれを着ていなかったから汚さずに済んだ。
持ってきたハンガーにかけておく。
散らかった床を一瞥した。
芽依が落とした、大事な“コレクション”たち。
『捨てて欲しいの、これぜんぶ』
「……もー。芽依ってばほんと嫉妬深いんだから」
ひとつひとつ拾い上げ、抱えたまま部屋を出た。
もともとこれらを保管していた部屋のクローゼットにかけ直す。
これらは“戦利品”だ。
それと同時に駆け引きの道具。
新たに得た芽依のカーディガンも一緒にハンガーパイプにかけておいた。
再び監禁部屋へ戻ってくる。
「さーて、片付けよう」
広げたゴミ袋にクッションやぬいぐるみ、本、お花、雑貨、ラグ……芽依のために買ってきたものを放り込んでいく。
最後に犬のぬいぐるみを拾い上げた。
裁ちばさみで背中を裂き、仕込んだ盗聴器を回収してから捨てる。
「ふぅ……。次は────」
部屋の外にある芽依のものを捨てていく。
歯ブラシやら化粧水やらの日用品。
すべて詰め込み終える。
どうにかひと袋におさまった。
「…………」
それを眺めていると、ふっと思わず冷たい笑いがこぼれる。
父親もまさか、送った金がこんなふうに使われているとは思いもしないだろうな。
きゅ、と袋の口をきつく縛る。
(……これでほんとに終わりか)
何となくもの寂しい気分になって、俺は記憶に思いを馳せた。