四月のきみが笑うから。
氷のような冷たさに、体が冷えていく。けれど、身体の芯の部分だけは、燃えるような熱さに包まれていた。
「……そんなことして、楽しいの?」
「黙りなさいよ。あんたはこうして無様に濡れていればいいの」
顔にかかる水は、あの日の雨に比べたら全然大したことなかった。
背中に庇うように隠した琴亜ちゃんの震えがわたしにも伝わってくる。
大丈夫だよと言うように手を握れば、同じぬくもりが返された。
「わたし、人の機嫌とって生きるのはもうやめたの。自由に生きるって決めたから」
「……ふっ、なにそれ。自由? 笑わせないでよ、ねぇ?」
「琴亜ちゃんに嫉妬してこんなことするの、いちばんかっこ悪いよ」
図星だったから余計に悔しかったんだろう。みるみる緋夏の顔が赤く染まっていく。
「琴亜ちゃん、何もしてないって言ってるじゃん。なのにどうしてこんなひどいことするの?」
「ぶ、部外者が口出ししてこないで!」
「たしかに部外者だけど……友達が傷つけられてるのに、そんなの見過ごせない。助けてもらった分、今度はわたしが助ける番なの」
ポタポタと雫が落ちる。
スッ、とこめかみを伝った水滴は、顎まで伝い、それから地面へと落ちた。