四月のきみが笑うから。
両者にとって、きっとここは思い出の場所。そんな場所をわたしにも共有してくれた。それがたまらなく嬉しい。
息を吐いた先輩は、しばらくして口を開いた。依然として、わたしとの距離を縮めることはないまま。
「確かに俺と珀都は兄弟だけど……でも、瑠胡の予想は違う」
「え」
「珀都は俺の、兄貴だ」
「え?」と声が洩れる。
一瞬聞き間違えたかと思ったけれど、「俺の兄ちゃんだよ」ともう一度先輩が繰り返したことで、やはり聞き違いではないのだと理解する。
「え、でも。ハクトくんは、先輩より小さい男の子、で……」
言葉が消えていく。
先輩の横顔がなんとも言えない儚さと切なさが混ざったように歪んでいて、それ以上言葉を紡げなくなった。
黙り込んだわたしをみることなく、視線を海に流した先輩が口を開く。
その唇は、わずかに震えていた。