四月のきみが笑うから。

「お母さんがわたしのためを思ってくれてるのは分かってる。だからできるだけお母さんのために頑張りたいって思った」


 限界を超えてでも。

 ぼろぼろに傷ついたとしても。


 それでもお母さんのためなら、頑張ろうって自分を奮い立たせていた。


「だけど、頑張りすぎなくてもいいんだって、大切な人が教えてくれた。だからわたし……」

「ごめんね」


 ふいに耳に届いた声に、思わず口を閉じる。

 それは長年聞いていなかった、本来のお母さんの声だった。柔らかくて、弱々しくて、どこか儚いような響き。


 この独特な空気の震わせ方が、わたしは昔から好きだった。
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