四月のきみが笑うから。
艶陽
【今日は講義で遅くなるから一緒には帰れない】
そんなメッセージに了解のスタンプを送信し、スマホを閉じる。
視線を上げた先、にやにやとした顔でこちらを見下ろす緋夏とばっちり目が合い、思わず「うわっ」と声が洩れた。
「なになにー、彼氏さんとのラブラブやりとりですか」
「ち、違うよ。ただの業務連絡みたいなもの」
「業務連絡て、真面目かっ」
「真面目でごめんなさいね」
ふん、と視線を逸らすと「ごめんて」と謝られる。
それでも拗ねたようにしていると、「それでさ」とお得意の要領で話題を変えられる。
けれど以前のような不快感は全くない。
「これから近くのクレープ屋に行くんだけど、瑠胡も来る? あ、メンツは女子だけの構成だから安心して」
「えー! 俺たち行けねーのかよ!」
「緋夏ちゃんに俺ら奢るよ?」
「女子だけとかずりぃ」
「ごめん! 今日は女子だけ、男子禁制でーす」
あの日以来、随分と柔らかくなった緋夏の人気度は男女共に爆上がりし、本当の意味でクラスのマドンナ的存在になった。
わたしにもかつての取り巻きたちにも横柄に接することはなくなり、一緒にいてとても楽しい。
「瑠胡、どう?」
「うん、行こうかな」
うなずくと、「やった」とガッツポーズをする緋夏は、「琴亜も呼ぼうか」と言い、鞄を持った。
「先に昇降口で待ってるから、琴亜に伝えるのお願いしてもいい?」
「うん、いいよ」
快諾すると、安心したように息を吐いた緋夏は、友達数名と教室を出ていく。
わたしも鞄に荷物を詰めて、一年五組へと足を運んだ。