四月のきみが笑うから。


「先輩、来るかな」


 ベンチに座って、電車を待つ。

 クレープを食べてから少し街を散策したため、いつもの電車よりも二本遅い。


 だから、もしかすると先輩に会えるかもしれない。そう思ったのだ。


(会えると、いいな)


 わがままを言ってはいけないとは思いつつ、やはり寂しいものは寂しい。

 会いたいし、話したい。
 この気持ちはずっと変わらない。


 駅で待っていることは、先輩には伝えていない。どうせならサプライズで、びっくりさせたかった。


 黙って線路を見つめたまま、ぼんやりと過去を偲ぶ。

 わたしたちの出逢いは、この駅だ。


 あの日、あの時、ここにわたしがいなかったら。先輩がここにきてくれなかったら。

 わたしが自殺しようという気になっていなかったなら。先輩が助けてくれなかったら。


 わたしたちは一生他人のまま、終わっていたのかもしれない。


 どれが欠けてもだめだった。
 どれかひとつだけでもエピソードが足りなかったら、今の形にはなっていない。


『瑠胡ちゃんとアイツが出逢ったのは、ちゃんと意味がある。偶然かもしれないけど、紛れもなく必然なんだ。アイツを救えるのは瑠胡ちゃんだけ。アイツの未来を託せるのは君だけなんだ』


 ふと、珀都くんの言葉が蘇ってくる。

 偶然が積み重なったら、それはきっと必然だった。


 そんな勝手な解釈をしてしまいたくなる。

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