四月のきみが笑うから。
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その夜、わたしは夢をみた。青い空が広がる海で、誰かがわたしを呼んでいる。薄茶色の髪をした誰か。それが果たして男性なのか女性なのか、そんな判別すら不可能だった。
『ねえ、君の名前は』
脳内に直接語りかけるような声。たとえばこれが夢ならば、声を出すことなどできなかっただろう。
「るこ……! 木月、瑠胡です……!」
けれど、意外にも声を返すことができて困惑する。叫んでも醒めない夢をみるのは初めてだった。夢特有のぼんやりとした感覚がなく、やけにはっきりとしていて景色もピントが合っているのに、人物の認識だけがうまくできない。
『そばにいてほしい。アイツの、そばに』
「あいつ……?」
それだけを言うと、スウッと水平線に溶けるように消えてしまう。手を伸ばしても、到底掴めるはずもなかった。
「待って……あなたの名前は…!?」
夢中で声を出すけれど、そんなものは届かない。寄せる波が、すべての音を消してしまう。漣の音がだんだん大きくなって、視界が青く染まっていった。
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その夜、わたしは夢をみた。青い空が広がる海で、誰かがわたしを呼んでいる。薄茶色の髪をした誰か。それが果たして男性なのか女性なのか、そんな判別すら不可能だった。
『ねえ、君の名前は』
脳内に直接語りかけるような声。たとえばこれが夢ならば、声を出すことなどできなかっただろう。
「るこ……! 木月、瑠胡です……!」
けれど、意外にも声を返すことができて困惑する。叫んでも醒めない夢をみるのは初めてだった。夢特有のぼんやりとした感覚がなく、やけにはっきりとしていて景色もピントが合っているのに、人物の認識だけがうまくできない。
『そばにいてほしい。アイツの、そばに』
「あいつ……?」
それだけを言うと、スウッと水平線に溶けるように消えてしまう。手を伸ばしても、到底掴めるはずもなかった。
「待って……あなたの名前は…!?」
夢中で声を出すけれど、そんなものは届かない。寄せる波が、すべての音を消してしまう。漣の音がだんだん大きくなって、視界が青く染まっていった。