四月のきみが笑うから。
花影


「ずっと思ってたんだけどさ」


 それは、四月も下旬に入ったころだった。

 放課後、いつものように駅に向かおうとしていたわたしに、緋夏たちが向かい合うよう並ぶ。


 それだけでなんとなく嫌な予感はしていた。


 黙ったまま、スッ、とくるみ色をした瞳が細くなるのを見つめていると、躊躇(ためら)いを微塵も見せない表情で、緋夏が静かに告げた。


「無理して笑ってるよね」


 その瞬間、糸が張ったように教室が静かになった。

 その一言だけで教室の騒音が消え、誰もの視線がわたしたちに集まる。


 温度のない声、抑揚のないひどく落ち着いた口調。


 まるでロボットか何かのようだった。

 ドッドッと速くなる心音、あがっていく呼吸。身体の表面が冷たいもので覆われ、ぞくりと悪寒がする。

 それなのに、身体の中心はなぜだか燃えるように熱い。


「え……なん、で?」

「だって瑠胡、全然楽しそうじゃないもん。無理してウチらに合わせる必要とか、ないし」


 ふっ、と蔑むように笑った緋夏は、「これからは絡まないから。だから安心して。ね?」と小首を傾げた。

 取り巻きたちも腕を組み、同調を示すようにうなずいている。
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