四月のきみが笑うから。

「今日は、会えないな……」


 こんなみっともない姿、見せられない。
 やはり泣いてばかりいるのだと呆れられて、嫌われるのが怖かった。

 学校を飛び出して、近くにあったコンビニに入る。顔が見えないようにうつむきながら不織布マスクを買い、すぐにつけた。

 みじめな顔をこれ以上晒していたくなかった。すべて覆い隠してしまいたかった。


 涙でマスクが濡れてひどく気持ちが悪い。

 それでも、こんなみっともない泣き顔を晒すよりはマシだった。



 いつもより二本遅い電車に乗ろう。そうしたら、先輩と会うことはきっとない。

 公園のベンチに座って、そんなことをぼんやりと考える。

 泣いたせいで腫れた目は、一向に治りそうになかった。頭がだる重い。大きな石が頭の上にのっているような感覚だ。
 

(これからわたし、ずっとひとりなのかな)


 ハブられた可哀想な人という認識で終わってしまうのだろうか。わたしは普通になりたいのに、悪い意味で普通ではなくなってしまった。ひっそりと生きるどころか、完全に悪目立ちしている。

 あとからあとから涙は溢れてくる。どんなに手で拭っても、まったくといっていいほど無意味だった。せめて呼吸だけでも落ち着かせるため、はあ、と深くため息を吐いたそのときだった。


「どうしたの? あの、よかったらこれ使って?」


 ふいに横から声がして肩が跳ねる。鈴が鳴るような、なんとも可愛らしい声だった。


「急にごめんね。なんだか困ってるみたいだったから、つい声をかけてしまったの」


 ゆっくりと顔をあげると、困ったように眉を寄せてハンカチを差し出す美少女がそこにいた。

 あまりの可愛さに言葉を失う。お世辞抜きに、女優さんかモデルさんレベルに可愛い。


 ぱっちり二重と高い鼻、ピンク色の薄い唇となにより加工アプリのようなツヤ肌。
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