四月のきみが笑うから。
「となり、座ってもいい?」
「あっ……うん」
目にハンカチを当てたままこくりとうなずく。
安堵したように息を洩らした古園さんは、背負っていたリュックを前で抱えるようにして座った。
「お名前は?」
「木月瑠胡です」
「瑠胡ちゃん。可愛い名前だね」
えへへと笑う古園さんは、本当に可愛らしかった。
どうしてこんな人があんなにも酷いことを言われなければならないのか分からない。それと同時に、わたしはこんなに優しい人を傷つけてしまったのだと罪悪感が渦巻いていく。
消え入りそうな謝罪が醜い口からこぼれていく。
「ごめんなさい……ごめんなさ……っ」
「どうして謝るの? 瑠胡ちゃんは何も悪いことしてないのに」
見えないところで、わたしはあなたを傷つけた。
それなのに、なぜか被害者ヅラして泣いている。泣く資格なんてわたしにはないのに。
眩しい古園さんと、影のようなわたし。緋夏に見放されたくなくて古園さんを貶したのに、結局見捨てられてしまった。
「泣くのは悪いことじゃないんだよ。いっぱい泣いてすっきりするなら、いくらでも泣いていいんだから」
あたたかい手が背中をさすってくれる。
優しさを感じてしまえば、あとからあとから涙は溢れてきた。いい加減、初対面の人の前で泣くのをやめたい。
ぐっと唇を噛むと、久しぶりに痛みを感じた。