四月のきみが笑うから。
教室に入った瞬間、水の中に飛び込んだように途端に息ができなくなる。
苦しくて喘ごうにも、喉が潰れてしまったように、声を出すことができない。
空気で肺を満たすことすら、今のわたしには容易なことではなかった。
チラチラと周囲の視線を感じる。
まるで主人公にでもなったみたいだ。ただ、注目される理由は正反対だろうけれど。
すべての視界を遮断するように、うつむきながら席につく。その間もずっと嘲笑われているような気がして、「消えたい」を頭の中で永遠と繰り返していた。
「おっはよー!!」
「わー、緋夏! おっはよ」
「おは〜」
一際目立って登場したのは緋夏だ。取り巻きたちが飛びつくように挨拶を返す。
緋夏は、今日も今日とて巻き髪にネイルにと、とびきりオシャレな姿で立っている。
ちらとわたしを一瞥した緋夏は、それから何も見なかったかのようにスッと視線を流した。
(ああ、あっけない)
友情という名の繋がりは、こんなにも脆いのだと。今まで必死に築いてきたはずのものは、まったくもって無意味だったのだと。
ここまではっきりと拒絶されてしまっては、悲しみや怒りなどの片鱗すら浮かんでこなかった。
(そもそも友情と呼べたのかすら、定かではないのに)
この状況に納得してしまっている自分は、きっと彼女に対して初めから期待をしていなかった。
彼女がわたしをあっさり捨てることができるように、わたしもまた彼女を信頼していなかったのだとここにきてようやく気がつく。
お互いが偽りだけでできた、くだらない関係だったのだ。