四月のきみが笑うから。
どこからかトランペットの音色が聴こえてくる。きっと吹奏楽部だろう。
音楽室は三階にあるはずなのにこんなところまで聴こえるなんて、と思っていると、階段をのぼった先にあるガラス張りになった場所で、数人の女子が演奏をしていた。俗に言う、パート練習というものだろうか。
普段、ホームルームが終わるなり駅に直行するわたしにとってその光景は珍しいものであり、それと同時にわたしにはない青春を仄めかすような、そんな不思議なものだった。胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚がする。
もしも部活をしていれば、もっとクラスに馴染めていたのだろうか。もっとたくさんの友達に囲まれて楽しく生活していたのだろうか。そこまで考えて、ふるふると首を横に振る。
わたしが孤立しているのは、何と言おうとわたし自身の内気な性格に問題があるからだ。部活に入っていなくても、すでにクラスに溶け込んでいる人なんて山ほどいる。
もちろん、部活に入ることで繋がる縁もあるだろうけれど、最終的にはその人の性格次第だろう。
考えれば考えるほど、どんよりと気分が落ち込む。自分ではどうしようもできない事実なのに、どうにかできるのではないかと心のどこかで期待している。
自分を変えることができるのは自分だけだと知っていながら、他人に変えてもらうことを望み、甘えた感情に縋ってしまいたくなっているのだ。
「……情けない」
自分には、とっくに呆れてしまった。期待したところで無駄だ。いつだってわたしは自分を裏切るから。
ため息をついて、廊下の角を曲がろうとした時だった。