四月のきみが笑うから。

 透明なピンクと青が混ざり合う世界で、たったひとつだけ輪郭がはっきりとしているもの。


(わたしは、先輩が好き)


 この気持ちだけは揺らぐことなく、ぼやけることもなく、ただそこに在る。


 冷たい水の感触が足を包み込む。

 上昇した体温と水の温度差が心地よくて、もっと浸っていたいとすら思ってしまう。


(だけど)


 きっとわたしの想いなんて、先輩には届かない。

 もし奇跡が起きたとしても、わたしの存在なんて重荷にしかならないだろう。

 医学部受験は大変だと、詳細を知らないわたしですら、分かっている事実なのだから。



 淡いピンク色を見つめながら、泣きたくなった。

 はっきりと恋心を自覚してしまったのに、この気持ちの行き場がない。


 先輩の邪魔はできないし、したくない。


(わたしが強い人間だったなら)


 迷惑をかけずにいられる、重くない人物だったとしたら。

 そんなタラレバを考えることすらしてはいけない。

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