四月のきみが笑うから。
「琥尋先輩と、だよ」
ずっと夢で見ていたこの場所が、まさか現実に存在していると思っていなかった。
だけど、先輩はここが『思い出の場所』だと言っていた。そして、毎度見る夢は、必ずここが舞台。
彼らの関係を考えてしまうのは、至極当たり前のことだった。
「ハクトくんは先輩の弟なの?」
『先輩ってだれ』
「琥尋先輩。知らない?」
ふるふると力なく首を横に振る彼。
だけど、どう考えてもそうなのだろう。琥尋先輩とハクトくんは、兄弟関係にある。
「だって、すごく似てるんだもん。笑い方、そっくり」
先輩のほうが少しだけぶっきらぼうな感じはするけれど。ふと重なる影がそっくりなのだから。
「どうしてわたしを助けてくれるの? わたし、先輩とハクトくんのおかげで自分をちゃんと見つめることができるようになったの」
『それは……よかった』
「夜がくるのが怖いって思わなくなったのは、ハクトくんのおかげだよ。この夢の中で、わたしを待っていてくれるから」
切なそうに目を細めるハクトくんは、静かに目を伏せ、それから意を決したようにわたしに向き直った。