四月のきみが笑うから。

『瑠胡ちゃん』


 わたしの名前が呼ばれる。

 あたたかい響きだった。


『そろそろアイツ、壊れるだろうから。どうか守ってやってほしい。こんなこと、瑠胡ちゃんにしか頼めないんだ』

「壊れるって、なんで……」

『アイツはすごく弱いから。僕よりもずっと、脆くて弱いやつだから』


 憂いが混ざる瞳は、どこか遠い場所を見ていた。わたしを見ているはずなのに、どこかピントが合わない。


『瑠胡ちゃんとアイツが出逢ったのは、ちゃんと意味がある。偶然かもしれないけど、紛れもなく必然なんだ。アイツを救えるのは瑠胡ちゃんだけ。アイツの未来を託せるのは君だけなんだ』

「未来……?」

『どうか、救ってやってほしい』


 僕にはそれすらもできないから────。


 同じ色をした水色の瞳が、揺れながらそう訴えていた。


「……無理だよ。わたしには、そんなことできない。その役目はわたしが背負うものじゃない」

『どうして』

「だって……そういうものだから」
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