腹黒王子の甘い寵愛。
「キスされて嬉しかった?」

「そ、そんなことっ……!!」

「あはは、冗談だよ」


今度はなんだか切なく微笑む。

朔くんの喋り方、なんでもかんでも私に対して本気に見えちゃう。


きっと、ちがうのに……。


「……っ……」


どうにかこの感情の行き場を作ろうとすると、スマホが鳴る。

電話だ。画面に映し出されたのは【桐谷くん】の文字。


急いで出ると、目の前で朔くんが嫌そうな顔をしていた。


「も、もしもし……」

【もしもし瑠奈、弁当できた。まだ裏庭か?】

「う、うん……」

【わかった。じゃあそっち行くからちょっと待っててくれ】

「あ、ちょっと——」


プツリと切れてしまった電話。
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