大好きな義弟の匂いを嗅ぐのはダメらしい

甘い匂い

 そのうち、ユーリスがくんくんと私の首の匂いを嗅ぎだした。
 
「甘い香りがする」

 そうつぶやいて、今度はペロッと舐める。

「ひゃっ!」

 ゾクンとして、声をあげてしまった。
 ユーリスは「味も甘いよ」とにんまりした。

 お互いの匂いを嗅いだり舐めたりしながら、私たちは何度も交わった。
 もうクタクタで動けなくなっても、抱き合い、体をなでた。


 翌朝、二人で手を繋いで、朝食の席に行き、お義父様とお義母様に謝った。

「ごめんなさい。嫌われたと思ったのは、私の勘違いだったんです」
「それでも、そう思わせたユーリスが悪いわ」
「それはそうですね、母上。申し訳なかった、アリステラ」

 私が謝ると、お義母様がユーリスを咎め、責められた彼は改めて私に謝ってくれた。
 その誠実な姿勢にときめく。

「それでは、リュクス公爵の件はお断りするんだな?」
「申し訳ありません」
「僕も謝罪に伺います」
「当たり前だ」

 ユーリスの言葉に、お義父様は重々しくうなずいた。
 でも、すぐ表情を緩めて私を見る。

「でも、よかったな、アリステラ」
「はい。本当にご心配をおかけしました」

 リュクス公爵にはみんなで平謝りした。
 彼は「もともと期待してませんでしたから大丈夫ですよ」と微笑んでくれた。
 ユーリスの上司になる人がいい人だと確認できてよかった。
 彼の婚活もうまくいくように祈った。


 *-*-*


 くんくんくん。

「あー、いい香り」
「ユーリス、そんなところの匂いを嗅がないで……」

 私の脚の間に顔をうずめて、ユーリスが敏感なところに鼻を押しつけている。
 しかも、彼の息がかかって、私の中がピクピクする。とろりとろりと蜜があふれてくる。
 
「ああん……だめ、恥ずかしいわ……」
「でも、たまんない匂いだよ」

 ユーリスが深呼吸するみたいに鼻から息を吸いこむ。
 逆のことをされて、わかった。
 人に匂いを嗅がれるのはとても恥ずかしい。
 とっても反省したから、止めてほしいと言うと、ユーリスは意地悪な顔で、「なんで? 僕の匂いも思う存分嗅いでいいよ」と笑う。
 それはうれしいけど、そうしたら、まったく同じことをし返されるのが目に見えている。それは恥ずかしすぎる。

「ユーリス……」

 中途半端な刺激だけ与え続けられ、我慢できなくなった私は、ねだるように彼の名前を呼んだ。
 ユーリスは紫色の瞳を甘く染め、私を見下ろした。

「僕がほしい?」
「うん、来て……」
 
 優しいキスとともに、彼が入ってきた。
 体も心も歓喜に震える。
 思いが通じてからユーリスは、以前に増して私を大事にしてくれる。
 私は彼にしがみついて、その首もとに顔をうずめる。
 こっそりユーリスの匂いを嗅ぎながら、幸せに浸った。


―fin―

  
 
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