【受賞】コワくてモテる高杉くんはせわが好き。
第三章 波乱の予感
〇せわの家・ダイニング(放課後)
アイスとお菓子をコンビニで買って来て、ささやかな球技大会お疲れ様会を開いている。理人と二人で並んでソファに座り、カップアイスを食べながら、ホラー映画を見ている。テーブルにはコンビニの袋とポップコーンが置かれている。
せわ「ひ、ひぎゃぁぁぁぁっ、で、ででで出たぁぁっ!」
理人(横がうるさすぎて全然内容入ってこない……)
理人は顔をしかめながら耳を塞いでいる。せわは理人の腕にしがみついて半泣き。
せわ「りひと、理人どうしよう……定子めっちゃ迫ってくるよ……! 食べられる……!(?)」
理人「食べられないから。これ映画な。あとアイス溶けてる」
せわ「身体の芯から凍えちゃって……冷たいの食べる気失せた」
理人「だから言ったろ。ホラー映画にアイスはないって」
せわはソファの上で膝を抱える。
理人「ビビりのくせにホラー好きって意味分かんないよな」
せわ「理人だってひーひー言いながら辛いやつ食べるでしょ。それと同じ」
理人「なるほど」
理人はせわからカップを取り上げて、「どろどろだ」と不満を零しながらアイスを完食。その様子を横で、せわが照れながら見る。
せわ(なんだか変に意識しちゃう……)
せわは体育座りをしながら、理人の顔を覗き込んだ。
せわ「今日、大活躍だったね」
理人「大活躍?」
せわ「ほら。乃亜ちゃんのことお姫様抱っこして保健室に行ったでしょ。みんな理人のこと王子様みたいって騒いでたよ」
理人「へー」
せわ「乃亜ちゃんて、すごい美人だよね。ノリいいし、運動神経もいいし……」
理人「急に何?」
理人は空になったアイスのカップをテーブルに置く。
せわ「乃亜ちゃん、理人のこといいって言ってたし、二人お似合いだなって思って。理人もさ、結構満更でもないんでしょ? ずっと彼女とかいないし、乃亜ちゃんとなら――」
とすん。その直後、理人に組み敷かれる。両腕を押さえられて身動きが取れない。
理人「それ、どういうつもりで言ってんの?」
せわ「え……」
顔が近くて、脈動が加速していく。理人は眉間に皺を寄せていて、怖い。ごくんと息を飲んだ。
理人「そういうの――迷惑」
せわ「……! ごめん。余計なお世話だったよね」
理人ははっとした表情を浮かべる。身体を起こし、せわから離れる。せわも半身を起こす。
理人「ごめん。せわは何も悪くない」
せわ「ううん、嫌な思いにさせちゃったんだもん。反省する」
理人「気にしなくていーから。ごめん、今日はもう帰るわ。頭冷やす」
せわ「……分かった」
理人を玄関の外で見送り、肩を竦めるせわ。
理人「それじゃ、また明日」
せわ「うん。また明日。おやすみなさい」
せわ(踏み込んじゃいけないところに踏み込んじゃったんだ。……ごめんね、理人)