新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
女子生徒の話が俺の頭から消えなかった。

どうして毎回、握手して別れるんだろう。

どうして、あいつはふらついていたんだろう。

俺は授業の間中、ずっと考えていた。

「知ってるか。ヴァンパイアは首筋に噛みついて血を吸うだけじゃない。こうして、触れただけでも血を吸えるそうだ」

放課後。

男子生徒が握手し合いながら話していた。

「触れただけで……まさか」

「なんだよ、岩館」

ガタンと椅子に座った俺に、男子生徒が顔を上げた。

「霞月が毎回、握手して別れるのは……血を吸って」

「はあ? 柊がヴァンパイアだとでも」

「ないない」

「だって、この間もさっきのあいつも、霞月と別れた後ふらついていたし」

「ヴァンパイアなんて、ただの噂だ。真に受けるなよ」

生徒会室に向かう俺の足取りは重かった。

霞月を誘っていくのを迷い、副会長と会計係と顔を合わせると思うと、息がつまりそうだった。
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