新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
「柊さんは大丈夫なんですか?」

「椿!? 俺がなんで?」

「私、観たんです。今日、柊さんと握手した人が急にふらついて。この間の時も」

「霞月と握手したら……もしかしてヴァンパイア?」

霞月は声を上げて笑いだした。

「ホラー小説でも読んだ?」

「読んでません。えっと……噂が」

「霞月がヴァンパイアではという噂か?」

「……はい」

霞月は話を聞きながら、笑いをこらえていたが椿に向かって「握手、試してみるか?」と真顔で言った。

椿は上目遣いでおどおどしながら、手を出そうかどうか迷っていた。

霞月が椿の手首をサッと掴んだ。

椿の喉から「ヒィッ、冷たい」と声が漏れた。

霞月の手は普段からひんやりしている。

その感触は冷たいペットボトルを押し当てられた時に似ていた。

椿は霞月の白く細い手をじっと見下ろしたまま、固まった。
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