新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
俺は自分の幼なじみに、こんな物騒な特技があったのかと思うと、驚きを通り越し寒気さえ感じた。

「いつの間にそんな……」

つい、口をついて出た。

「最初は退屈しのぎにゲームをしていたんだけど、飽きてきてさ。パソコンを触っているうちにアプリのパスワードから色々ね」

霞月は俺の耳元で囁いた。

パソコンを開いて20分ほどで、温室の監視カメラの映像が、画面に映し出された。

「やった!」

ずっとパソコン画面を観ていた副会長と会計がハイタッチして喜んだ。

俺は「凄い」と思ったものの、素直に喜べなかった。

1年間の休学はどれほど退屈だったのか、どれほど孤独だったのかを考えた。

「喜ぶのはまだ早い。フェイクの画像を仕掛ける準備も必要だし、薔薇が1晩で枯れるトリックも解かなきゃならない」

俺は学生鞄から筆記用具を取り出し、思いつくままを箇条書きした。
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