新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ー柊くんはヴァンパイア
「柊さんはドライフラワー、作ったことがあるんですか?」

椿は冷蔵庫で冷やした水出しのローズティーを配り訊ねた。

「いや、ない。さっきのはネットの情報。実際に作ってみるか? 新月までには日にちがある」

俺は霞月が答える側でWEB検索し、必要な材料を調べて、メモをとった。

材料は薔薇以外、どれも100円均一の店で調達できるキットがあると分かり「へえ~、便利だな」と、声に出した。

「薔薇は俺が用意する」

「霞月、いいのか? お前の家の薔薇だろ。お前が大事に育てた薔薇……」

「薔薇事件解決、俺が言い出したことだからな」

霞月は明らかに仕方ないだろうという顔をしていた。

霞月の家の温室の薔薇の見事さは、言葉にできないほどだ。

霞月が庭師と共に、どれほど丁寧に薔薇を育て、大事にしているかを知っている。

霞月は胸中穏やかではないはずだ。
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